トライボロジーとは接触面の科学と技術

「相対運動しながら相互作用を及ぼしあう表面及びそれに関連する実際の問題を対象にする科学技術」
(by Prof. P. Jost, 1966)

これが「トライボロジー」の言葉の定義です.

平易かつ狭義に言えば,表面接触摩擦摩耗潤滑をキーワードとし,2つの物体の接触面に発生する摩擦摩耗現象を解明するとともにそれらを制御するための技術を取り扱う学問です.

トライボロジーの応用範囲

トライボロジーの応用範囲は,現代産業を支えるありとあらゆる工業分野のみならず人間の関節に代表される医療分野,地震の発生,地滑りに代表される自然分野から身近な生活にまで及びます.

物理学者Wolfgang Pauli「神が物体を作り,悪魔が表面を作った」と評する表面同士の接触を扱い,そこで発生する摩擦摩耗を制御するためには,物理学,化学,材料学,弾塑性学,破壊力学,流体力学,熱力学,医学,生物学など数多くの学問とトライボロジーが応用される分野の経験的知見が不可欠です.それ故,「トライボロジー」は,あらゆる分野の「基盤技術でありかつ学際的学問」として位置付けられています.

トライボロジーは機械に携わる者にとって「必須の学問」です.機械におけるトライボロジーの意義とその重要性を十分に理解しなければ,これからの機械設計はできません.

なぜなら,機械の信頼性と耐久性を高める鍵は,接触面における摩擦と摩耗の制御技術だからです.従来不可能であった多くの技術を可能にする鍵は,接触面における摩擦と摩耗の制御技術だからです.

巨大な宇宙ステーションから微小なマイクロマシンまで,あらゆる機械の信頼性と耐久性,エネルギーとコストの損失そして性能の限界は,多くの場合,機械に存在する数多くの接触部(動く部分)の摩擦と摩耗に支配されています.

省資源・省エネルギーに貢献し,高信頼性・耐久性を保証し,従来存在し得ない機能と性能を有する機械を設計するためには,従来の「材料と形の設計」とともに「表面と接触面の設計」が必要不可欠となります.そのための科学技術,それが「トライボロジー」です.